先に知っておきたいこと
おすすめを探す前に、基準を決める
「おすすめ」のツールを探しても、答えは人によって変わります。原稿の形式、作りたい本、パソコンの環境によって、合うツールが違うためです。先に自分の条件を決めておけば、一覧を見たときに、候補を絞れます。
「いちばん良いツール」はない
原稿の形式、作りたい本、パソコンの環境によって、合うツールは変わります。また、どのツールでも、書き出したEPUBは端末やアプリで開いて確認する必要があります。
KDPで出すなら、EPUBにしなくてもよい
KDPは、Word(DOC/DOCX)のままでも受け付けます。ヘルプでは、EPUBのほか、Kindle Createで作るKPF形式も紹介されています。「EPUBを作る目的」がKDPだけなら、変換ツールを使わない選択肢もあります。
選ぶ5つの基準
基準1:原稿の形式
最初に見るのは、手元の原稿がどの形式かです。
| 原稿の形式 | 候補になるツール |
|---|---|
| Word(.docx) | WordToEPUB、Calibre、オンライン変換、Kindle Create |
| Markdown・HTMLなどのテキスト | Pandoc、Calibre |
| Calibre、オンライン変換(崩れやすい。詳しくはPDFをEPUBに変換する方法) | |
| すでにあるEPUB(直したい) | Sigil |
基準2:出力の目的
何のためのEPUBかで、求める仕上がりが変わります。
- KDPに出す:Word(DOCX)やEPUBのまま受け付けられる。Kindle Previewerで確認する
- 教材・資料を配布する:読み上げソフトで読みやすい作りを重視するなら、WordToEPUB
- 技術書・文書を量産する:コマンドで自動化できるPandoc
- 小説の縦書き:どのツールでも、縦書きとルビが意図どおりに出るかを確認する必要がある
基準3:使える環境
- WordToEPUB:公式ページによると、Windows 7〜11に対応する。Mac版の記載は公式ページにない
- Calibre:公式サイトによると、Windows・Mac・Linuxで使える
- Pandoc:コマンドラインで動く。環境の準備が要る
- オンライン変換:ブラウザがあれば使える。インストール不要
基準4:確認と調整の手間
- 設定が少なく手軽 → オンライン変換、WordToEPUB
- 設定が多く調整できる → Calibre
- CSSを自分で書く → Pandoc
- 書き出したあとに直す → Sigil
手軽なツールほど、細かい調整はできません。細かく直したいなら、手間がかかるのが前提です。
基準5:費用と、データの扱い
- 無料のツールは多い(WordToEPUB、Calibre、Pandoc、Sigil、Kindle Create、Kindle Previewer)
- オンライン変換は無料枠があるが、ファイルサイズや変換回数に制限があるサービスが多い。内容はサービスごとに違い、変わることもあるので、利用時に各サービスで確認する
- オンライン変換は、ファイルを外部のサーバーに送る。未発表の原稿や個人情報を含むものは、利用規約と、ファイルの扱いを確認してから使う
代表的なツールの向き不向き
WordToEPUB(Wordのアドイン)
DAISYコンソーシアムが提供する無料のツールです。Wordで見出しスタイルを付けた原稿から、EPUBを書き出せます。アクセシビリティを意識した作りです。見た目の細かい調整や縦書きは、書き出したあとに編集が必要になることがあります。
Calibre(変換ソフト)
電子書籍の管理と変換ができる無料のソフトです。マニュアルには、Word 2007以降の.docxを自動で変換でき、見出しスタイルから目次を作れることが書かれています。設定項目が多いため、慣れが要ります。
Sigil(EPUBの編集ソフト)
公式サイトで、EPUBで電子書籍を簡単に作るためのソフトと紹介されています。変換ではなく、EPUBの中身を直接直すためのものです。変換ツールで書き出したあとの仕上げに向きます。公式の開発ページ(GitHub)では、「無料のオープンソースの電子書籍エディター」と紹介され、ライセンスはGPLv3とされています。Windows向けには、Windows 10(1809)以降のx64用インストーラーが提供されています。
Pandoc(コマンド)
文書を別の形式に変換するコマンドラインツールです。公式サイトでは、GPLライセンスで公開されているフリーソフトと説明されています。公式マニュアルによると、出力ファイル名の拡張子に.epubを指定するとEPUB(3)が作れます。EPUBを作るときはCSSが必要だと書かれており、見た目は自分で決めます。
オンライン変換サービス
ブラウザでファイルをアップロードし、EPUBでダウンロードします。1回だけ試すときに手軽です。サイズや回数の制限、データの扱いに注意します。
Kindle Create(KDP向け)
Amazonが提供する、KDP向けの無料の書籍作成ツールです。KDPのヘルプによると、Word(DOC/DOCX)を取り込んでリフロー型のeBookを作れます。出力はKPFで、一般のEPUBリーダー向けのEPUBを書き出すツールとは位置づけが異なります。表・リスト・脚注には既知の制限があります。縦書きやルビへの対応は、この記事の確認時点で、公式の説明を確認できていません。
結論:基準と原稿で、候補を2つに絞る
| やりたいこと | 候補 |
|---|---|
| Wordの原稿を、無料で変換したい | WordToEPUB、Calibre |
| Markdownなどのテキストから量産したい | Pandoc |
| 1回だけ、手軽に試したい | オンライン変換 |
| 書き出したEPUBを、細かく直したい | Sigil |
| KDPで、Wordから出したい | Kindle Create、またはWordのままアップロード |
候補を2つに絞ったら、短い原稿で実際に変換して比べるのが確実です。書き出したEPUBは、目次・見出し・縦書き・ルビ・画像を、端末とKindle Previewerで確認してください。
よくある質問
初心者は、どれから始めればよいですか?
Wordで原稿を書いているなら、WordToEPUBかCalibreです。コマンド操作が要らず、無料です。1回だけ試すなら、オンライン変換でも構いません。
有料のツールのほうが、きれいに仕上がりますか?
この記事では、有料ツールの比較は扱っていません。価格と仕上がりの関係は、公式の資料では確認できていません。一方、Calibreのマニュアルには、見出しスタイルを付けておくと目次を作れると書かれているように、変換前の原稿の整え方は結果に影響します。
縦書きの小説に向くツールは?
この記事の確認時点で、各ツールの公式資料から、縦書きとルビへの対応可否を確認できたものはありません。どのツールでも、書き出したあとに縦書きの向き、ルビの位置、目次を端末で確かめてください。
変換したEPUBは、何で確認すればよいですか?
リーダーのアプリと、KDPで出すなら、無料のKindle Previewerです。EPUBを開いて、端末や文字サイズごとの見え方を確認できると、KDPのヘルプに書かれています。