先に知っておきたいこと
「無料」でも、手間が要らないわけではない
無料のツールは、見た目の細かい調整や、確認を自分で行うのが前提です。目次の構造、見出し、画像の位置、日本語の縦書きやルビが意図どおりに出るかは、書き出したあとに端末で確かめる必要があります。
原稿の形式で、選べる方法が変わる
使える方法は、原稿がどの形式かで変わります。
- Wordで書いた → WordToEPUB、Calibre
- Googleドキュメントで書いた → Googleドキュメントの書き出し
- Markdownなどのテキストで書いた → Pandoc
- すでにEPUBがある(直したい) → Sigil
- KDP専用に作る → Kindle Create
KDPで出すなら、EPUBにしなくてもよい
KDPは、Word(DOC/DOCX)のままでも受け付けます。KDPのヘルプでは、Kindle Createで作るKPF形式も紹介されています。EPUBを自分で作るのは、KDP以外にも使いたい、目次や見出しの構造を自分で確かめたい、といった場合です。
方法1:Googleドキュメントで書き出す
Googleドキュメントは、「ファイル」→「ダウンロード」→「EPUB(.epub)」で、EPUBを書き出せます。Googleの公式ブログで、2016年3月に追加された機能として紹介されています。
向いている場面
Googleドキュメントで原稿を書いていて、まず手軽にEPUBを作りたい場合です。インストールが要りません。
注意点
見出し・段落以外の細かい書式や、縦書き・ルビの再現は、書き出して確認する必要があります。この記事の確認時点で、縦書きやルビの対応について、Googleの公式な説明は確認できていません。Googleのヘルプ(ダウンロードのページ)には、現在の書き出し形式の一覧が見当たらなかったため、メニューに表示されるかは、お使いの画面で確認してください。
方法2:WordToEPUB(Wordのアドイン)
DAISYコンソーシアムが提供する、Word用の無料のツールです。公式ページによると、Windows 7〜11に対応しています。Mac版の記載は、公式ページにはありません。
Wordで見出しスタイルを付けた原稿から、題名・著者・言語などを入力してEPUBを書き出せます。アクセシビリティ(読み上げソフトでの読みやすさ)を意識した作りが特長です。
方法3:Calibre(変換ソフト)
電子書籍の管理と変換ができる無料のソフトです。公式サイトによると、Windows・Mac・Linuxで使えます。マニュアルには、Word 2007以降の.docxを自動で変換でき、「見出し1」などの見出しスタイルを付けておくと目次を作れることが書かれています。
手順
- 原稿(.docxなど)をCalibreに追加する
- 「本を変換」で、出力形式を「EPUB」にする
- 題名・著者・表紙などを確認して変換する
- 書き出したEPUBを、リーダーやKindle Previewerで確認する
注意点
設定項目が多く、慣れるまでは試行錯誤が必要です。PDFからの変換は、レイアウトが崩れやすくなります。詳しくは、PDFをEPUBに変換する方法を参照してください。
方法4:Sigil(EPUBの編集ソフト)
Sigilは、公式サイトで「EPUBで電子書籍を簡単に作るために作られた」と紹介されている、EPUBの編集ソフトです。EPUBの中身を直接直すためのもので、CalibreやWordToEPUBで書き出したあとに、目次・リンク・見た目を細かく直す、という使い方が向いています。
公式の開発ページ(GitHub)では、「無料のオープンソースの電子書籍エディター」と紹介され、ライセンスはGPLv3とされています。Windows向けには、Windows 10(1809)以降のx64用インストーラーが提供されています。最新版や、MacとLinuxでの入手方法は、インストールの前に公式の配布ページで確認してください。
方法5:Pandoc(コマンドで変換)
文書を別の形式に変換するコマンドラインツールです。公式サイトでは、GPLライセンスで公開されているフリーソフトと説明されています。公式マニュアルによると、出力ファイル名の拡張子に.epubを指定するとEPUB(3)が作れます。MarkdownやHTMLなどのテキスト原稿から作るときに向いています。マニュアルは、EPUBを作るときはスタイルシート(CSS)が必要だと書いていて、見た目は自分でCSSを書いて決めます。
pandoc 原稿.md -o 本.epub --toc --css=style.css
コマンド操作とCSSに慣れた人向けの方法です。
方法6:Kindle Create(KDP向けの無料ツール)
Amazonが提供する、KDP向けの無料の書籍作成ツールです。KDPのヘルプによると、Word(DOC/DOCX)を取り込んで、リフロー型のeBookを作れます。作ったものは、KPF(Kindle Package Format)として、KDPにアップロードします。
- 作れるのはKDP向けのファイルで、一般のEPUBリーダー向けのEPUBを書き出すツールとは位置づけが異なる
- ヘルプには、表・リスト・脚注に既知の制限があることが書かれている
- この記事の確認時点で、縦書きやルビへの対応について、公式の説明は確認できていません。日本語の縦書きの本に使うかは、事前に試して確認してください
無料の方法で作るときの確認点
どの方法でも、次の点は書き出したあとに確認します。
- 目次:章のタイトルから目次が作られているか、リンクが機能するか
- 見出し:「見出し1」などのスタイルが付いた部分が、見出しとして出ているか
- 日本語の縦書き・ルビ:向き、位置、文字の欠けがないか
- 画像:位置がずれていないか、大きすぎて読み込みが重くなっていないか
- 表示の確認:複数の端末・アプリで開いて、見え方が大きく違わないか。KDPで出すなら、Kindle Previewer(無料。EPUBを開いて、端末ごとの見え方を確認できる)で確認する
結論:原稿と目的で選べば迷わない
| 方法 | 向いている原稿 | 向いている人 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| Googleドキュメント | Googleドキュメント | 手軽に作りたい | 縦書き・ルビは確認が必要 |
| WordToEPUB | Word | Windowsで、アクセシブルな教材・資料を作りたい | Mac版の記載は公式にない |
| Calibre | Word・テキスト・HTMLなど | 本格的に変換して、目次やメタデータも調整したい | 設定が多い。PDFからは崩れやすい |
| Sigil | 既存のEPUB | 書き出したあとを、細かく直したい | 変換ではなく編集のためのソフト |
| Pandoc | Markdown・HTMLなど | コマンドとCSSに慣れた人 | CSSを自分で用意する |
| Kindle Create | Word | KDPで出す人 | 縦書き・ルビは事前に確認する |
とにかく手軽に試すなら、Googleドキュメント。本格的に作るなら、Calibreで書き出してからSigilで仕上げる。この流れを軸に、原稿の形式で選んでください。
よくある質問
無料のツールだけで、売り物になるEPUBは作れますか?
作れる場合があります。ただし、売り物にできるかどうかは仕上がり次第で、無料のツールは確認と調整を自分で行うのが前提です。目次、見出し、画像、日本語の縦書きとルビを、端末とKindle Previewerで確かめる手間がかかります。
いちばん簡単な方法はどれですか?
Googleドキュメントで書いている原稿なら、メニューから書き出せるのが最も手軽です。ただし、書式が単純な文書向けです。
Macでも使えますか?
Calibreは、公式サイトでMacにも対応しています。WordToEPUBは、公式ページにMac版の記載がありません。Googleドキュメントはブラウザで動くため、OSを選びません。
EPUBにせず、Wordのまま出してもよいですか?
KDPには、Word(DOC/DOCX)のまま出せます。ただし、複雑な書式では変換がうまくいかないことがあるため、アップロード後のプレビューで確認してください。