先に知っておきたいこと
WordにはEPUBで保存する機能がない
Wordの「名前を付けて保存」には、EPUBの形式がありません。Microsoftのコミュニティの回答でも、WordにEPUBの保存機能はなく、各出版社が用意する変換ツールや、Kindle Create、Calibreなどを使うよう案内されています。そのため、何らかのツールを一度通す必要があります。
KDPはWordのままでも受け付ける
Kindle本を出すだけなら、EPUBにしなくても構いません。KDPのヘルプでは、受け付ける原稿の形式として、Microsoft Word(DOC/DOCX)、EPUB、Kindle Package Format(KPF)などが挙げられています。Wordのファイルも多くはうまく変換されますが、複雑な書式を含む場合は変換がうまくいかないことがあるため、Kindle Previewerでの確認が勧められています。
それでもEPUBを自分で作る理由は、次のようなものです。
- 目次や見出し、画像の位置を、自分で確かめて整えたい
- KDP以外の電子書店や配布にも使いたい
- 縦書きやルビなど、日本語の本らしい見た目に整えたい
変換した結果は、必ず目で確認する
どの方法でも、変換後のEPUBは読むための端末やアプリで開いて確認します。KDPにアップロードしたあとも、オンラインプレビューア(タブレット・スマートフォン・Kindle端末での見え方)と、パソコンのKindle Previewerで確認できます。
方法1:WordToEPUB(無料のWord用アドイン)
DAISYコンソーシアムが提供する無料のツールです。公式ページによると、Windows 7〜11に対応し、無料でダウンロードできます。最新版は2023年7月公開のバージョン1.0.11です。Mac版についての記載は、公式ページにはありません。
手順
- 公式ページからインストーラー(setupWordToEPUB.exe)をダウンロードして実行する
- Wordで原稿を開く。見出しには「見出し1」「見出し2」などのスタイルを使っておく
- 追加されたWordToEPUBの機能から、題名・著者・言語などを入力して書き出す
向いている場面
読み上げソフトで読みやすいEPUBを作る、教材や資料を配布する、という場面です。画像に代替テキストを付けるなど、アクセシビリティを意識した作りが特長です。
注意点
小説の縦書きや、凝った装飾を細かく指定したい場合には、あとからEPUBの中身を編集する必要が出ることがあります。
方法2:Calibre(無料の電子書籍ソフト)
電子書籍の管理と変換ができる無料のソフトです。公式のマニュアルには、Word 2007以降で作った.docxを自動で変換できること、Wordで「見出し1」「見出し2」などのスタイルを付けておくと、見出しから目次を自動で作れることが書かれています。
手順
- Calibreに原稿(.docx)を追加する
- 「本を変換」を選び、出力形式を「EPUB」にする
- 題名・著者・表紙などのメタデータを確認して変換する
- 出来上がったEPUBを、リーダーやKindle Previewerで確認する
注意点
設定項目が多く、思い通りの見た目にするには試行錯誤が必要です。日本語の縦書きやルビが意図どおりに出るかは、書き出したあとに必ず確かめてください。見た目を細かく直すなら、EPUBの編集ソフト(Sigilなど)での仕上げも選択肢になります。
方法3:Pandoc(コマンドで変換)
文書を別の形式に変換する無料のコマンドラインツールです。公式マニュアルによると、出力ファイル名の拡張子に.epubを指定するとEPUB(3)が作れます。EPUB 2にしたいときはepub2を指定します。目次は--toc、表紙画像は--epub-cover-imageで指定します。
pandoc 原稿.docx -o 本.epub --toc --css=style.css
公式マニュアルは、EPUBを作るときはスタイルシート(CSS)が必要だと書いています。見た目は自分でCSSを書いて決めることになるため、コマンドとCSSに慣れた人向けの方法です。
方法4:オンライン変換サービス
ブラウザでWordファイルをアップロードし、出力形式にEPUBを選んでダウンロードする方法です。インストールが要らず、1回だけ試したいときに向いています。
気をつける点は次のとおりです。
- ファイルを外部のサーバーに送るため、未発表の原稿や個人情報を含む文書には慎重になる。利用規約と、ファイルの扱いを確認する
- 無料で使えるファイルサイズや変換回数に制限がある場合が多い。サービスごとに異なり、変わることもあるので、利用時に各サービスの案内で確認する
- 目次や見出しの扱い、日本語の縦書き・ルビなどは、サービスによって差が出る
変換前に、Wordを整える5つのポイント
どの方法でも、結果の差を生むのは変換前のWordです。
- 見出しに「見出し1」「見出し2」のスタイルを使う。 文字を大きく太くするだけでは、見出しとして認識されません。目次の自動作成にも必要です
- 空行で間を空けず、段落の設定で調整する。 空行の連続や、スペースで位置をそろえる書き方は、端末によって崩れる原因になります
- 画像は「挿入」で入れる。 KDPのヘルプも、コピーして貼り付けるのではなく挿入機能を使うよう勧めています
- 強制改行を減らし、章の終わりに改ページを入れる。 こちらもKDPのヘルプにある推奨です
- 本文をテキストボックスに入れない。 変換で落ちたり、順序が崩れたりする原因になります
結論:目的で選べば迷わない
| 方法 | 費用 | 向いている人 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| WordToEPUB(アドイン) | 無料 | Windowsで、アクセシブルな教材・資料を作りたい | Windows向け。見た目の細かい調整や縦書きは、あとから編集が必要になることがある |
| Calibre(ソフト) | 無料 | 手元で変換して、目次やメタデータも自分で調整したい | 設定項目が多く、慣れが要る。仕上がりの確認は必須 |
| Pandoc(コマンド) | 無料 | コマンド操作に慣れた人、技術書・文書を量産したい | CSSを自分で用意する必要がある |
| オンライン変換サービス | 無料枠あり | 1回だけ、手軽に試したい | アップロードが必要。サイズや回数の制限がある |
「とにかく無料で試す」ならCalibre、Windowsでアクセシビリティを重視するならWordToEPUB、コマンド操作に慣れているならPandoc、1回だけ手軽に試すならオンライン変換が目安です。
よくある質問
WordをそのままKDPにアップロードしてもよいですか?
はい。KDPはWord(DOC/DOCX)を受け付けます。ただし、複雑な書式があると変換が思い通りにならないことがあるため、アップロード後のプレビューで確認してください。
無料の方法で、売り物になるEPUBは作れますか?
作れます。ただし、無料のツールは見た目の細かい調整を自分で行うことが前提です。目次、見出し、画像、ルビの出方を、端末とKindle Previewerで確かめる手間がかかります。
縦書きの小説も、これらの方法で作れますか?
この記事の方法では、縦書きとルビが意図どおりに出るかを、それぞれ確認する必要があります。書き出したあと、端末とKindle Previewerで、縦書きの向き・ルビの位置・目次を確かめてください。
MacでもWordからEPUBを作れますか?
WordToEPUBの公式ページには、Mac版の記載はありません。MacではCalibreやPandoc、オンライン変換が選択肢になります。