先に知っておきたいこと
EPUBは「流れる文章」が基本
W3Cの解説によると、EPUBのコンテンツは、あらかじめページを組むのではなく、表示するときに整えることを前提にしています(リフロー)。読む人が文字の大きさや画面の幅を変えると、文章はそれに合わせて流れます。紙のページのように、すべての要素が決まった位置にあることを期待すると、崩れたように見えます。
崩れを防ぐには、変換前の原稿が大事
見出しに「見出し1」などのスタイルを使う、空行で間を空けない、といった原稿の整え方が、変換の結果を左右します。詳しくは、WordをEPUBに変換する方法4選|無料ツールの選び方の「変換前に、Wordを整える5つのポイント」を参照してください。
変換した結果は、必ず目で確認する
KDPのヘルプでは、どの形式で出す場合も、Kindle Previewerで変換結果を確認するよう勧められています。Kindle Previewerは無料で、EPUBを開いて、端末の種類・向き・文字サイズごとの見え方を確認できます。
注意点1:レイアウトが崩れる
起きること
- 表の列が崩れる
- 画像が本文から離れる、余白が不自然になる
- 雑誌風のデザインが、バラバラになる
原因
PDFのように、ページの位置が固定された形式をリフロー型のEPUBに変えると、組み直しが必要になります。Calibreのマニュアルでも、複雑なもの、段組のもの、画像が中心のものは、PDFからの変換が難しいと書かれています。
対策
- 複雑な段組や、凝った装飾は避ける。単純な構成の原稿にする
- ページの見た目を保ちたい資料は、ページの配置を固定する「固定レイアウト」のEPUBという選択肢がある。W3Cの解説では、絵本・漫画・雑誌のような用途に使えると説明されている。ただし、作り方は別になる
- 変換後に、必ずリーダーとKindle Previewerで確認する
PDFからの変換については、PDFをEPUBに変換する方法3選で詳しく扱っています。
注意点2:文字化けと、日本語の縦書き・ルビ
起きること
- 文字が「□」や「?」になる
- 縦書きが横書きになる、ルビ(ふりがな)が消える・ずれる
- 絵文字や特殊な記号が欠ける
原因
PDFや原稿で使ったフォントが、変換先で使えないと、別のフォントに置き換わります。W3Cの解説では、EPUB 3はフォントとしてOpenTypeとWOFFに対応していて、商用フォントのライセンスに配慮した難読化も認められていると説明されています。ただし、どのフォントが実際に表示されるかは、読む側のアプリや端末に依存します。
対策
- 特殊なフォントは、できるだけ避ける
- 縦書き・ルビは、書き出したあとに、向き、ルビの位置、文字の欠けを、実際に確認する
- 縦書きとルビの再現は、リーダーによって差が出ることがあるため、複数の環境で確認する
この記事の確認時点で、各変換ツールとリーダーの縦書き・ルビの対応状況について、公式な一覧は確認できていません。
注意点3:DRM(著作権保護)が付いたファイル
起きること
DRM付きの市販の電子書籍や教材は、変換が制限されている場合があります。
対策
- DRM付きのファイルは、保護を外して変換しない。法律上の問題になるおそれがある。出版社や配信サービスが提供する、正規の形式を利用する
- 自分で作った本のDRMは、KDPでは出版者が選べる。KDPのヘルプでは、DRMを付けるとKindleのアプリと端末でのみ読め、付けない場合は購入者がEPUBやPDFをダウンロードできると説明されている(2026年1月20日からの案内)。設定は出版後も変更できるが、変更の反映には24〜72時間かかり、すでにダウンロードされたファイルには影響しない
注意点4:画像の扱い
起きること
- 画像が大きすぎて、一部の端末で読み込みが重くなる
- 画像が本文と離れた位置に出る
対策
- 表紙は、KDPの仕様に合わせる。KDPのヘルプによると、形式はTIFFまたはJPEG、理想のサイズは縦2,560ピクセル×横1,600ピクセル、最小は縦1,000×横625ピクセル、最大はどちらの辺も10,000ピクセルまで、ファイルサイズは50MB未満、RGB、縦横比は1.6:1以上とされている
- 本文の画像は、Wordに貼り付けるのではなく、「挿入」で入れる
- 本文の画像の解像度やファイルサイズについて、eBook向けの具体的な数値は、この記事の確認時点で、公式ヘルプから確認できなかったため載せていない。変換後のファイルの大きさと表示を確認する
注意点5:目次とメタデータの不足
起きること
- 章の移動ができない(目次が作られていない)
- 題名や著者名が空のまま
対策
- 見出しに「見出し1」「見出し2」のスタイルを使う。見出しから目次が作られる。Calibreのマニュアルにも、見出しスタイルから目次を作れることが書かれている
- KDPのナビゲーションのガイドラインでは、次のことが説明されている
- ページ内の目次(HTMLの目次)は、本の先頭のほうに置く。末尾には置かない
- 目次の項目は、HTMLのリンクにする。tableタグで目次を作らない。ページ番号は書かない
- 論理的な目次(NCX、またはEPUB 3のnav)は、特に20ページを超える本で重要。Kindleは、2階層までの入れ子に対応している
- 題名・著者・言語などのメタデータは、変換前に入力する。変換ツールの入力欄と、KDPの登録画面で確認する
注意点6:リーダーごとの表示差
起きること
- 同じEPUBでも、アプリや端末によって見え方が違う
- CSS(スタイルシート)の一部が無視される
- 縦書き・ルビ・禁則処理が、機種で変わる
対策
- 主要なリーダーと、Kindle Previewerで確認する
- 複雑なCSSは避け、基本的なスタイルにとどめる
- KDPで出すなら、アップロード後のオンラインプレビューア(タブレット・スマートフォン・Kindle端末での見え方)も使う
結論:確認する順番を決めておく
| 項目 | 主な原因 | 確認のしかた |
|---|---|---|
| レイアウト崩れ | PDFなど、位置が固定された元データ。複雑な段組・表 | リーダーとKindle Previewerで、表・画像・改ページを見る |
| 文字化け・縦書き・ルビ | フォントの置き換え。リーダーの差 | 向き、ルビの位置、文字の欠けを複数の環境で見る |
| DRM | 保護が付いた元ファイル | 変換せず、正規の形式を使う |
| 画像 | 大きさ、挿入のしかた | 表紙はKDPの仕様に合わせる。本文は挿入機能で入れる |
| 目次・メタデータ | 見出しスタイルの不足、入力漏れ | 目次のリンクと、題名・著者・言語を確認する |
| 表示差 | アプリや端末の違い | 複数の環境で見比べる |
変換の前に原稿を整え、変換の後に複数の環境で確認する。この2つを習慣にすると、崩れを減らせます。
よくある質問
変換のたびに崩れます。ツールを変えれば直りますか?
ツールで差が出ることはありますが、先に元の原稿の作りを見直す価値があります。見出しスタイルの使用、空行で間を空けない、複雑な表や段組を避ける、といった整え方を確認してください。
表が崩れるのは、どうすればよいですか?
表の列数を減らす、単純な構成にする、といった対応があります。それでも崩れる場合は、Kindle Previewerで、端末の種類と文字サイズを変えて確認してください。
縦書きとルビは、どのリーダーなら崩れませんか?
この記事の確認時点で、リーダーごとの対応状況を比べた公式の一覧は確認できていません。書き出したEPUBを、お使いのリーダーとKindle Previewerで確かめてください。
自分で作った本を、DRMなしで出すとどうなりますか?
KDPのヘルプでは、DRMなしの本は、購入者がEPUBやPDFをダウンロードでき、Kindle以外の端末でも読めると説明されています。DRMの設定は、出版者が選びます。